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スローライフVo.4/秘密の特等席
人は誰しも自分だけの小さな素敵な秘密を持っている。
例えば通勤や通学の途中で出会う名も知らない憧れの人、他人には言えない自分だけの大好物、あるいは美しい景色を見るときの特等席・・・
他人には決して理解できないかもしれないけれど、自分の中の密かな楽しみだ。
原宿の駅から表参道を富ヶ谷方面に向かって2つ目の歩道橋。東京に暮らしていた頃、この歩道橋の上がボクの特等席だった。
夕暮れ時になると、歩道橋の下を走る車のスモールライトの灯りが眩く、右手には公園越しに見える新宿の高層ビル群、左手にはやはり渋谷の街のネオンが煌く。
人間はことごとく自然の美しさを破壊して来たが、夜景の美しさだけは人類が創造したもっとも美しいモノであると思う。
ところで河口湖の特等席は、自宅のすぐ下から見える湖畔の東側の眺め。
夜明けの山々を染める朝焼けが艶やかで、夜には向こう岸に見える公園の灯火がロマンチックだ。カヌーやディンギーを浮かべても、ここからの眺めは一枚の絵のように静かで美しい。
この場所で、その景観に見惚れて、幾度となく深いため息をついたものである。
そしてその度に、この地に暮らすことのできる幸せに感謝するのである。
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