試しに「熊野古道」とネットで検索すると、必ず登場するであろう写真が「観音通り」の風景ではないか。以前にも言ったが、一口に「熊野古道」と言っても、その道は4府県に跨がり、歩く道によって様々な表情を見せるが、この「観音道」はその代表的存在とも言える。
まずはJR紀勢本線の「おおどまり」の駅のすぐ傍にある登山道に入ると、「西国三十三所観音石像」の第五番~第十五番の11体の観音像たちが並んで出迎えてくれる。そこから約1㌔先に「比音清水寺」跡があり、この「比音清水寺」には古くから近所の人々が「観音講」を作って詣っており、809年(延暦23年)に坂上田村麻呂(蝦夷大将軍)によって建立されたという。
「比音清水寺」を通りすぎて頂上にたどり着くと、その道は今度は「大観猪垣道」へと続いている。この「大観猪垣道」というのは、猪や鹿から農作物の被害を防ぐために作られた石垣の登山道で、この道にも、やはりかつての人々の労苦の跡が見受けられる。
「大観猪垣道」は大吹峠へと続き、大吹峠を右折して登山道を下りて行けば、また元の「おおどまり」の駅近くの海岸へと辿り着く。この下りの登山道は美しい竹林に囲まれ、日本の繊細な情緒が存分に堪能できる道でもある。そして大泊の海岸は、真っ白な砂浜と淡藍色の透明な海が、まるで南国の海のような美しさを魅せており、登山で疲れたカラダとココロを優しく癒してくれる。いつか機会があれば、この海で泳いでみたいと思わせる。
繊細で美しい日本の自然、そして古来より続く厚い信仰。「観音道」はその双方を満喫できるのである。
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