「眼下に輝く渓谷を眺めながら
ダイアモンドみたいに輝く砂漠を通り抜けて
風に波打つ小麦畑や、舞い上がる土ぼこりの中を通り抜ける。
鐘の音が聞こえて、やがて霧が晴れていく
この国はあなたたちと私たちのためのもの」
これはアメリカのフォークシンガー、ウディ・ガスリーの「わが祖国」の一節である。
秋になって風に揺れる黄金色の稲畑を見る度に、ボクはこの歌詞を思い出す。
かつては2440枚もの棚田があったと言われる「丸山千枚田」も、季節に応じてその美しい姿を見せるが、作物がまったくない冬季でさえ、その棚田は日本の美しい原風景の面影を保っていた。夏にはこの棚田が緑に揺れると言われ、夏の夜にはライトアップも施されると言う。
紀伊半島も熊野を過ぎれば交通の便も悪く、クルマがようやく一台通れるくらいの山道が続くが、だからこそ、古来から連綿と続く美しい日本の風景が保たれていると言える。
地元の人々の暮らしの不便さには慮れるが、すべての地域での交通網が整備されることがいいとは限らない。この地を旅していると、とくにそう思う。
海岸線に出れば、どこか南の島のような白砂の浜に淡藍色の透明な海。そして一歩山に入れば、雅やかな竹林や田園風景が拡がる。
ウディ・ガスリーはアメリカの原風景を牧歌的に謳い上げたが、我が日本でもそこかしこに、美しい原風景が息づいているのである。
丸山千枚田の美しい風景を俯瞰から臨みたいのならば、「通り峠」からさらにこの170段の階段を登らなければならない。
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