今ではアウトドア関連のどんな雑誌を見ても、必ず、と言っていいほど誌面に登場しているモデルのカズー、こと山下晃和君が書いた「自転車ロングツーリング入門」(実業之日本社)を読んだ。
カズーが東南アジア、それに南米を自転車で旅した時の記録が綴られている本だ。もちろんその本のタイトル通り、ロングツーリングのノウハウもいっぱい詰まっているが、その長い自転車の旅を通じて、異国での様々な貴重な体験が熱く語られている。
発展途上国を旅していると、いろいろな動物の内蔵や糞尿の匂いに混じって、その国の独特の香辛料やハーブが絶妙に混ぜ合わさり、嗅覚の奥を刺激され、強烈な旅の想い出として深く心の底に蓄積される。その混沌の中で、カズーは精神的、肉体的に何度も挫けながらも、ペダルを踏み続ける。望郷、旅情、慕情、寂寥を内包しながらも、旅を続けるその姿に、時代を超えた若者の情熱が迫る。
些か文章が荒削りで、もう少し踏み込んで語って欲しい箇所もいくつかあるが、それでもそれらを凌駕するほどに、カズーの旅に対する、いや、人生に対する熱き思いがひしひしと伝わる。
「そう思うと、旅の中でいちばん重要なのは遺跡観光でも、自転車で走った距離でもない。(出会い)なのだと思う。困った時や辛い時に旅で出会った人々の優しさに救われたからこそ、僕は旅を続けることができたのだ。」とカズーは語る。その言葉通り、様々な人々と(それがポン引きであっても)の出会いを通じて、彼が精神的に逞しく成長する様子が読み手側に伝わってくる。
願わくば、カズーの旅した足跡を、地図に著して欲しかった。
最近のコメント