冬至が過ぎ去り、少しずつ陽が伸びてきているとは言え、1月中旬から2月中旬までの一ヶ月間は、もっとも気温が低い時期である。
今年は雪も少なく、除雪作業が必要な纏まった雪は年末に降っただけ。それも翌日に降った暖かい雨によって融けてなくなり、毎朝の山のランもスパイクなしで走ることが可能だ。
暖かい季節には太陽の動きに無頓着になりがちだが、この季節にはどこから太陽が登って、どこに沈むのか。その位置や時間にとても敏感になってしまう。そして今頃、地球の反対側の人々や動植物たちを温めているのだろうと、遥か彼方に注ぐ陽の光にまで思いを馳せる。
寒くて深い夜、または雲に遮られた灰色の空の下に居ても、この地球上のどこかで輝く太陽の存在を知るだけで、我々は僅かながらも希望を見いだせるものである。
そしてどんなに寒い季節でさえ、木々や草花の根は土中深くでひっそりと息づき、春の到来を我慢強く待っている。
「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ」
シドニー五輪の女子マラソンで、見事、金メダルに輝いた高橋尚子選手は、高校の時の恩師から贈られたその言葉を、今でも座右の銘にしていると言われている。
夏になると花のその甘い香りでうっとりとしてしまうスイカズラ。昔の人はこの蜜を吸ったことから「吸い葛」と読んだが、スイカズラは漢字で書くと「忍冬」。これはスイカズラの葉が、寒い季節でも美しい緑を保つからである。
昨日、山を走っている時に、大木の根のえぐれた土の下から、こんなにも大きなツララが下がっているのを見つけた。さきほども言ったように、このところ雪も雨も降っていないので、土も乾燥しているように見えるが、実はこんなにも水分を含んでいるのだ。そしてその水分が、土の中に眠る植物たちを静かに育んでいる。そして春になれば、南から戻ってきた太陽が、芽吹いた新しい命をさらに大きく育てるのだ。
そのように考えれば、冷たく凍りついたツララの存在でさえ、小さな希望の種に映るのである。
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