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2011年11月24日アーカイブ

愛犬は人工的な動物ですか?

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 最近、NHKの提供する「NHKオンデマンド」を利用している。

 NHKで放送された番組を、後からネットを通じて視聴できるというシステムで、見逃した番組などを後からPCで視聴できる。

 日常の中でテレビを観る習慣がほとんどなく、自宅にいる時に朝のニュース番組を観るくらいである。で、その続きで15分間、朝ドラも観るが、それも仕事などの都合で観たり観なかったり。で、しばらく観ないと物語の展開が見えなくなり、やがて観なくなる。そういう意味では便利なシステムだ。

 最近、そのNHKオンデマンドで観た番組で、とても興味深い内容のモノがあった。

 「地球ドラマチック」という番組の特集で「イヌはこうして進化した~オオカミから医療介助犬まで」

 一般的にイヌはオオカミから自然に進化したように思われているが、この番組では様々な角度からそれを検証して、人間が作為的にイヌを創り上げたという説を展開している。

 つまりオオカミの中でも比較的に温和で、人間に対して威嚇しないオオカミばかりを集め、さらにはその中でもより従順な種を何度も掛けあわせ、最終的に人間に対して、限りなく忠実なる犬種を生み出したと検証している。

 イヌは生後2年くらいで十分に繁殖能力を持つので、わずか10年ほどで品種改良を行うことが可能だ。こうして気温や地域に対応して、なおかつ狩猟や牧畜などに適するイヌを創り上げて来た。

 しかしそれでも、19世紀まではイヌの持つ特質を生かした進化を、人間が作為的に行なってきたが、19世紀に入ると、それはイヌという種にとって悲劇的なモノに変化していく。

 古代中国では気位の高いモノにとって、獅子を飼い慣らすことがその地位の証明とされた。もちろん中国には獅子など存在しないので、イヌを品種改良することによって、外見が獅子に限りなく近く、尚且つ、飼い慣らし易いイヌを創ろうとした。その結果、出来上がったのが「ペキニーズ」というイヌである。

 英国が中国に攻め入り、王族が愛したペキニーズを本国に持ち帰って、自国の女王にそれを差し出した。

 19世紀当時のイギリスでは産業革命に依って潤っており、世の中に中産階級と呼ばれる富裕層が増えつつあった。彼らは女王のスタイルを真似る傾向にあったので、あっという間にその奇異なスタイルのイヌが流行となった。小さく、そのスタイルが奇異なほど、中産階級の富裕層の人々にとって、それは裕福の証となって行ったのだ。  

 イヌの種としての悲劇はまだまだ続く。

 こういう犬種が流行りだすと、人はもっと違った、もっと奇異なスタイルの犬種を求めるようになる。その結果、ブルドックのように自分では子孫繁栄のできない犬種まで生み出してしまう。

 ブルドックは頭部が異常に大きく、そのまま胸部も発達している、が、異常なまでに腰がくびれているのだ。その結果、産道を通っての出産が不可能になり、帝王切開によってしか出産ができない。

 オオカミとして一つの源であったイヌは、今現在では400種を超える数となり、その多くは人間によって都合良く作られた犬種である。

 以前、ラブラドールとアイリッシュの純血種を飼っていたことがあったが、そのどちらもが短命であった。もう二度とイヌを飼うまいと決めていたが、3年前からゴールデン系の雑種を飼うことにした。

 その際に知り合いの警察犬学校の先生に「どんな犬種がもっとも強いですか?」と質問したら「雑種が一番強い。人間が勝手に創りだした純血種は、どこかに欠点を持っているものだ」との答えが帰ってきたが、この番組を見ればそれも頷ける。

 誤解しないで頂きたいのは、純血種を飼うことが悪いということではない。イヌにはそれぞれ改良を重ねて来た歴史の中で、DNAとしての特性があり、それを無視して見た目だけで飼うことは、イヌにとっても人間にとっても好ましくない、ということである。

 それにしても恐ろしく感じるのは、その動物の性質を知り、それを人工的に掛けあわせて行けば、思い通りの性格の種が創り出せるという事実である。

 非現実的な発想ではあるが、もしもこれを人間に適応すれば...あゝ、想像するだけでも恐ろしいのである。





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    木村東吉
    1958 年大阪生まれ。
    20代は雑誌「ポパイ」の顔としてファッションモデルとして活躍したが、その後、30 代に入りアウトドア関連の著作を多数執筆。
    現在は河口湖に拠点を置き、執筆、取材、キャンプ教室の指導、講演など、幅広く活動している。
    また各企業の広告などにも数多く出演しており、そのアドバイザーも務めている。

    詳しいプロフィールはこちら

    木村東吉公式サイト「グレートアウトドア」

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