モデル時代の友人の女性がアメリカ人と結婚した。で、ご主人の仕事の都合で海外を転々とすることに。
コロラド、オレゴン、バーモント、そして現在は香港に彼らは住んでいるが、先日、一時帰国した際に渋谷で再会した。実は彼らがコロラドで暮らし始めた時に、ボクはそこを訪ねている。2003年の独立記念日の前後で、彼らと会うのはそれ以来だ。
コロラドやオレゴンにはボクも何度か行ったことがあるが、バーモントには一度も行ったことがない。バーモントでの暮らしがどんなものか質問した。
「ホントにシンプルな暮らし」彼らは目を輝かせて続けた。
「でもシンプルだけど豊か。ブランド品の店もないし、カリフォルニアとかと違って、エスニックな料理を食べさせるレストランもない。でも美味しいパンは毎日のように食べられるし、生活に必要なモノはすべて揃っている。ホントに心が豊かになれる場所」
彼らの言っている意味が理解できる気がする。
数年前までスイス政府観光局の仕事に携わっていた時期があり、ボクも何度かスイスを訪れた。スイス人のサラリーは高く、最低賃金は月額で30万ほどとか。人々の暮らしは豊かで、チューリッヒは毎年、「もっとも暮らしたい都市」のリストの上位にランクされている。
だがそこでの人々の暮らしぶりは質素である。
もっとも驚いたのは、若い女性がいつも同じ服でいる、ということだ。例えば1週間ほど同じところに滞在して、現地のガイドの女性と毎日会うとする。そしたら彼女はほぼ毎日、同じ洋服を着ている。日本人のように頻繁には着替えないのだ。
洋服に限らず、消費の方向性がまったく違うように感じる。
「香港もいいところ。でもバーモントのような心の豊かさは感じられない。そして不思議とそういう場所に、ブランド品の店がひしめいている気がする」と彼女は言った。
彼らと別れた後、表参道を歩く。この時期、イルミネーションが施された表参道はとてもロマンチックで美しい。そのイルミネーションに輝く通りにふと目を留めると、やはり高級ブランド品の店が目立つ。もちろん突き詰めて考えれば、こういうイルミネーションだって、なんらかの消費欲を刺激するための演出なのだ。
ホントの意味での豊かな暮らし...そういうことに思いを巡らせながら、イルミネーションに輝く表参道をゆっくりと歩いたのであった。
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